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連載コラム

VOL.10 田村蘊(造形作家 京都造形芸術大学教授)

田村先生の講義風景

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VOL.10 田村蘊

瓜生山の実生

瓜生山の実生

点描画

点描画

漂流物から

漂流物から

現代社会において、先生が日常感じられることの中で、足りない(欠けている)と感じられることにどのようなことが挙げられますでしょうか。

ある夕方の電車内、二人の男子高校生が四人掛の席を独占しスマホの画面に集中している。附近には多くの乗客が立っている。足を閉じて席を詰める…。チラッと目を上げ、また画面に戻る…。ちょっとした行為で周りの空気が変わります。マナーの欠如が言われて久しいですが、まだこのような光景を見かけます。若者たちの姿を家庭の躾(しつけ)や学校教育の問題として語る事も出来ますが、少し違う視点から見ると彼らには残念ながら想像力が欠如しているようにも思われます。更に言うなら彼らを育てた社会に問題があるのかも知れません。想像力とは問題を解決する力ではありますが、先に何が起こるかを読み取り他者にどのような気持ちを与えるかという思いやりの力でもあります。世の中には日々不幸な出来事が起こっていますが大半はこの想像力で解決出来るように思います。我々は機能や利便性を優先させた先に、想像力の乏しい社会と直面した現実を知る事になったように思います。

そうした社会において必要なこと、そして「芸術」が役立てること(「芸術」を学ぶ意味)とはどのような点にあるとお考えでしょうか。

そうした社会において必要なこと、そして「芸術」が役立てること(「芸術」を学ぶ意味)とはどのような点にあるとお考えでしょうか。山を駆け回ったように私は今もアート採集と呼ぶ遊びを続けています。例えば「A ~ Z 探し」。街の風景から、海岸に打ち上げられる漂流物から、山に生えている木々や葉からアルファベットの文字の形を採集する遊びです。探している文字が見つからない時には柔軟な発想と遊び心で解決出来ます。重要な事は思い切り遊ぶという事ですが、それには心身共に持続出来る体力が必要です。芸術を学ぶとは自身の心身を修練し懐の深さを見つめ直す事だと思います。

先生は、これからの社会を生きる上で大切にすべき視点(=美意識)をどのような点にあると考えますか?

日々何気なく見ていたものが視点を変えると新たな発見をする事が多々あります。雑木林に生えている実生(種子からの発芽したばかりの植物)の茎を抜き出して根の姿を見つけて感動した経験がありました。地上での凛とした実生の姿からは想像も出来ない根の美しさを知った時の驚きは忘れる事が出来ません。予期しなかった世界に圧倒されて以来、実生達の根の姿を想像して楽しんでいます。我々は普段目にする光景に想いを馳せる事はありますが、見えないものに焦点を当てることでまた、新たな世界を見つけ出す事もあります。既成の概念を捨て、違った角度から見つめ直す事で得られるものがあります。美意識とは自身の気持の中に存在するものかも知れません。大層な道具や高価な材料がなくても身近な「もの」や「こと」からでも作品は生まれるでしょう。

先生が藝術学舎の講座を通して受講生に伝えたいことなどをお教えください。

講座では主に点描画の世界や身近な物から生まれる「ものづくり」を担当しています。点を黙々と打つことで日頃の雑念を払い画面に集中し新たな世界を発見する面白さを伝えようとしています。また身近な素材でも「ものづくり」の可能性を柔軟な思考や遊び心で見出す楽しさを共に探そうとしています。しかし、誤解しないで下さい!楽しい時間が用意されている訳ではありません。楽しい世界を得る為には相当な忍耐力と集中力が必要です。最初から満足のいく作品は出来ないかも知れません。失敗を繰り返し、反省し、創意工夫を積み重ねる覚悟が求められるでしょう。「遊びの達人養成講座」と捉えてもらっても良いですね。大の大人が真剣に本気で遊ぶ姿は捨てた物ではありません。

最後に、これから「芸術」を学ぼうとされている方へ、エールをお願いいたします。

遊び心には常に新たな視点で見つめる姿勢と今までの既成概念を捨て去る思い切りが必要です。毎日見慣れた風景を一度、別の視点から見直す挑戦をしてみて下さい。きっと新たな世界を発見するでしょう。歩き慣れている大通りから裏道に足を踏み入れると知らなかった佇まいや不思議な人物に巡り会うかも知れません。食べ慣れた食材に少し違う調味料を加えると今まで味わった事の無いご馳走に変身するかも知れません。想像することは創造することに繋がると思います。最後に、本音を話すと子供や孫達に負けずに一生懸命に遊びましょうよ!きっと我々の姿を見て彼等も想像力を働かせてみたくなるかも知れません。

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