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連載コラム

Vol.8 金子典正(博士(文学)、京都造形芸術大学准教授)

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vol.8 金子典正

図1:爛肉豇豆

図1:爛肉豇豆

図2:西湖の夜景

図2:西湖の夜景

図3:西湖の蓮

図3:西湖の蓮

図4:萬福寺大雄寶殿

図4:萬福寺大雄寶殿

人・社会・暮らしなど現代社会において、先生が日常感じられることの中で、足りない(欠けている)と感じられることにどのようなことが挙げられますでしょうか。

わたしは仏像の歴史を研究しているため、普段の生活においても歴史的なことが気になってしまいます。スーパーでササゲを手にとればインゲン豆を思い出し、隠元禅師、萬福寺、黄檗宗、福建省などなど、次々とキーワードが頭に浮かびつつ、そして「今日の夕飯は中華が食べたい!」となります(図1)。あるいは、京都のいくつかの寺院では今でも普茶料理が楽しめますので、食卓を囲んだ楽しい光景が目に浮かんだりします。しかし、15年前のわたしを振り返ってみると、こうした連想(妄想?)は全く無かったように思えます。当時はまだ大学院生でした。研究と生活のために目の前のことに追われ、余裕の無い生活が果てしなく続いていました。

そのことに対し、「芸術」が役立てること(「芸術」を学ぶ意味)とはどのような点にあるとお考えでしょうか。

芸術を学ぶことは人生を豊かにする。そんなふうに思いながら、大学院時代は苦しくとも研究を続け、非常勤講師となってからは授業で自分が学んできたことを学生たちに話すことで特に問題はありませんでした。しかし、やがてカルチャースクールの講座を担当するようになると、自分のそれまでの生き方を大いに反省する機会が増えたのです。ご年配の生徒さんたちは教室内ではわたしの話しを熱心に聴いてくださいます。しかし、講座が終わったあとのお茶の席では仏像や寺院にまつわる小説、風土、料理など話題が尽きることがありません。そして勿論、わたしはそうした話題について行くことができなかったのです。笑顔で返答しつつ、心のなかでは冷や汗がとまりませんでした。

先生は、これからの社会を生きる上で大切にすべき視点(=美意識)をどのような点にあると感じられますでしょうか。

それ以来、わたしは授業や講座で取り上げる寺院や遺跡はできる限り出かけて行き、学問的なことのみならず、その土地の気候や風土、人々の暮らしにも興味を持つようになりました。非常勤時代は相変わらず苦しい生活が続いていたため、実際には貧乏旅行の連続でしたが(照)。ただ、出かけるたびに痛感したことは「まずはその場所に行って立ってみる。空気を吸ってみる」ことの大切さです。目に入ってくる景色は様々な情報を与えてくれます。以前、中国浙江省の西湖(図2)の畔に佇んだとき、できることなら漢詩のひとつでも詠んでみたいと心底思いました。当然そんなことはできませんでしたが、湖のあちこちで群生する蓮をみたとき(図3)、和久傳のれんこん菓子「西湖」が頭に浮かびました。そして楽府の「採蓮」、仏教美術と蓮華との関わり、というように連想ゲームが始まるのです。

先生がこの冬もご登壇される講座(『京都・みほとけめぐり』や『仏像大解剖! 鑑賞して解説を書こう』)を通して、受講生に伝えたいことなどを簡単にお教えください。

いずれの講座も今年で4年目を迎えました。みほとけ講座は京都の著名な寺院や仏像を取り上げて毎回スライドとプリントを使用しながら分かりやすい講座を続けています。仏像大解剖の方は仏像を観察してその解説文を自ら完成させる二日間の集中講座です。時折、受講生の皆さんから「先生、この前の講座で取り上げた仏像をみてきました!」という声とともに拝観時の色々な出来事を話していただくことがあります。とりわけ「あのほとけさま、とっても素敵なお顔でした」という言葉を耳にするときは、まさに講師冥利に尽きる瞬間です。かつてわたしが感じたことと同じように感じてもらえるのは本当に嬉しいことです。一方、この冬にとりあげる京都宇治の萬福寺(図4)には大きなお腹の布袋像や胸を開いて胎内仏をみせる十六羅漢像などが安置されています。ここから冒頭の連想ゲームを続けるならば、東京目黒の五百羅漢寺にたどり着きます。みほとけからはじまる世界は興味が尽きません。

最後に、これから「芸術」を学ぼうとされている方へ、エールをお願いいたします。

まずはその場所に行って立ってみる。空気を吸ってみる。興味をもって行動し、あれこれと思考を重ね、そして大いに妄想して欲しいと思います。芸術を学ぶことで新しい世界が広がることは間違いありません。例えば、わたしの講座でみほとけについて学んだあとは、ご家族、ご友人と一緒に是非お出かけください。積み重ねられた知識と経験は、あなたの大切な人の人生をもきっと豊かにするでしょう。

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