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連載コラム

VOL.14 寺尾文秀(建築造作家、京都造形芸術大学非常勤講師)

東山のカフェでの打ち合わせ風景(撮影:上田篤)

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VOL.14 寺尾文秀

相棒のカッターナイフ

相棒のカッターナイフ

自宅リフォーム模型

自宅リフォーム模型

寺リョーシカ

寺リョーシカ

人・社会・暮らしなど現代社会において、先生が日常感じられることの中で、足りない(欠けている)と感じられることにどのようなことが挙げられますでしょうか。

私事で恐縮ですが、僕は床屋を変えたことが一度もありません。幼少の頃から同じ店、同じ人に散髪してもらっています。特に珍しいとは思いませんが、誰かにこの話をすると皆が驚きます。加えて、「カット中は一切目視してない」と話すと更に驚かれます。40年近く通っているとさすがにお互いのクセも知り尽くしていますし、僕自身も道具を使った仕事をしているせいか、目視せずとも毛髪から伝わる感触とハサミの音でカットの様子が手に取るようにわかります。今や、手順やコンセプト(何故そのようにカットするのか)など、目には見えない気遣いを感じることが楽しみとなっています。そんな中、別のスタッフが担当する機会も何度かありました。同じように目を閉じてカットを感じていると、“ハサミを使っている”マスターと“ハサミに使われている”スタッフの違いに毎回衝撃が走ります。経験の差と言えばそれまでですが、視認性だけに頼りがちな気がしました。現代の生活スタイルにおける特徴かもしれませんが、物事の本質に目を向ける機会が失われつつあるように感じます。

そのことに対し、「芸術」が役立てること(「芸術」を学ぶ意味)とはどのような点にあるとお考えでしょうか。

ここ数十年、生活スタイルが驚くほどのスピードで変移しているのは、皆さんも身をもって感じておられることでしょう。話しかけるだけで応対してくれる携帯端末。勝手に運転してくれる車。複雑な形であろうと難なく成形してしまう3Dプリンタ。ボタン一つで掃除や料理など事が済んでしまう家電製品。便利なモノで溢れかえっている現代社会の中で、僕自身も少なからずその恩恵を受けながら生活している一人です。しかし、世の中が便利になればなるほど、人間としてあるべき姿がそぎ落とされていくようで、不安を覚えます。表層的に物事が判断され過程が軽んじられる。それが当たり前の環境となった社会の中で次世代の若者が育っていく。芸術を学ぶというのは、ヒトとヒトとの付き合い方や忘れかけている感性を呼び起こしてくれる、充填してくれる役割を担っていると思います。

先生は、これからの社会を生きる上で大切にすべき視点(=美意識)はどのような点にあると感じられますでしょうか。

僕は建築模型や造作など、モノづくりを生業として活動していますが、かれこれ20年来の付き合いとなる相棒を紹介しましょう。近所のホームセンターで購入した98円のスライド式大型カッター(赤色)です。刃も某メーカー製品を愛用しており、仕様を変えたことはありません。どのようなカットもよほどのことがない限りこれ1本で制作しています。長年同じ道具を使い続けていると、道具だけでなく素材に対する理解も深まりました。「ひとつの道具を制するはあらゆる素材を制す」と言っては大げさかもしれませんが、古人が言う「道具を大切にせよ」という意味が今になって言葉以上に理解できます。便利な道具を使って楽をすることは簡単ですが、遠回りになっても自分なりのこだわりは今後も大切にしたいなと思います。

先生が藝術学舎の講座を通して受講生に伝えたいこと(ないしは、これから企画される講座で伝えていきたいこと)などを簡単にお教えください。

藝術学舎では、「寺尾道場」「パース基礎」を担当しています。パース講座は超入門編として基本的な技法を学ぶ講座です。得意の模型を使った丁寧な基礎学習を心掛けていますが、技法だけでなく様々な分野に応用できる新たな視点をも養っていただければと思います。また、今や “道場の師範”という肩書が名刺代わりとなっている「寺尾道場」は、建築模型を学ぶ講座です。門下生には道場破り(笑)を目指した腕自慢や、作ることが大好きな超初心者の方まで幅広くおられます。毎回、制作内容を少しずつ変えながら講義をしていますが、すぐに真似できそうにもないマニアックな技法はもちろん、モノづくりの“楽しさ”も伝えています。道場らしく、門下生に免許皆伝を記した秘伝書でも作ろうかと企画しています。

最後に、これから「芸術」を学ぼうとされている方へ、エールをお願いいたします。

「芸術」って何でしょう。水を一滴垂らしただけでも芸術と呼べるかも知れません。地球を覆い尽くすような被膜を創造することも芸術かも知れません。遠い未来、芸術という言葉があるのかもわかりません。何気ない小さな一歩から「あなたの芸術」は始まります!

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