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連載コラム

VOL.16 塩見貴彦(画家)

山水画制作風景

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VOL.16 塩見貴彦

「西游東歸」展(2010年)

「西游東歸」展(2010年)

「芥子園画伝」講義風景

「芥子園画伝」講義風景

アトリエ(古籍と文房四宝)

アトリエ(古籍と文房四宝)

人・社会・暮らしなど現代社会において、先生が日常感じられることの中で、足りない(欠けている)と感じられることにどのようなことが挙げられますでしょうか。

生活スタイルが多様化し、大量の情報をすばやく保存することが可能になる一方で、「淘汰すること」即ち自分が本当に必要とする「物事の本質」を自分の意志で選択する機会が少なくなっています。私はよく散歩をしますが、そこで大切にしているのは、誰もが知っている決まったコースを散歩するのではなく、自分の時間と気分に合わせて自在に状況を変えながら歩くように心がけています。毎日の暮らしには多くの情報が点在していますが、誰かに与えられたものではなく自分が主体的に行動しながら新しい情報に対し敏感に反応する柔軟な心が、美の意識を磨くための第一歩となります。現代社会は時間に追われ、物事を視覚的には「見ている」ようで実は心眼で「観る」ことが足りないのではと感じています。

そのことに対し、「芸術」が役立てること(「芸術」を学ぶ意味)とはどのような点にあるとお考えでしょうか。

ものの見方は1つではなく様々な可能性を秘めています。時代の潮流に流されすぐに「効率」、「結果」を求めるのではなく、答えのないことに立ち向かいながら、「美しいな」「面白いな」といった純粋な感性を自分の心で熟成させ、点と点を結ぶように物事に対して独自の接点を見つけることが大切です。私のアトリエには無数のメモが貼ってあります。メモ帳、スケッチブック、チラシなどの切れ端が多いのですが、ジャンルを問わず心に残る「言葉」を書き留め、いつの日か断片的な「言葉」と「言葉」に関係が生まれ、美を創造するきっかけとなることを期待しています。人は常に内在する心の動きを意識しながら生活することで感受性は高まります。ぜひ「芸術」を通して自己を見つめ、自由な発想力の中で自分の価値観を広げてほしいと思います。

先生は、これからの社会を生きる上で大切にすべき視点(=美意識)はどのような点にあると感じられますでしょうか。

東洋思想には「道」という考え方があり、「書道」「茶道」「弓道」など最後に「道」という漢字を使います。ここで言う「道」とは私たちが進む現実的な「路」ではなく、言葉に表せず「聞くこと」「見ること」「触ること」もできないが確かに存在する何かを追求する美の精神世界を表しています。とても曖昧なもので不安に感じるかもしれませんが、繊細な心の動きに対応するには大切な東洋の考え方です。美意識はそれぞれが持つ感性によって花開きますが、部分的なところばかりを気にしていると大きな方向性を見失ってしまいます。まず自分が求める「道」が何であるかを大観することから始めると、これからの社会を生きる上で何かにつまずいた時、それは失敗によるマイナスではなく、「道」を求める再出発としてプラスに考えることができるはずです。

先生が藝術学舎の講座を通して受講生に伝えたいこと(ないしは、これから企画される講座で伝えていきたいこと)などを簡単にお教えください。

昨年から「水墨アトリエ」も始まり、東洋伝統文化のひとつとして水墨画を体系的に学ぶ環境が整いつつあります。芸術学舎の「楽しく学ぶ水墨画講座」では、水墨画技法を断片的に学習するのではなく、時代背景と絵画史の流れを紐解きながら、水墨画が東洋の歴史・文化と密接に関係していることを学んでほしいと思います。さらに水墨画は「余白」の芸術と言われています。現代の複雑な社会構造の中で、目に見えるものだけを信じ追求するのではなく、目に見えない余白の空間を意識しながら心を開放することで、水墨画は東洋文化の精華として今後も日常生活で自分を磨く心の糧になってくれるはずです。

最後に、これから「芸術」を学ぼうとされている方へ、エールをお願いいたします。

「藝」という漢字は「人が植物を土に植えて育てる様子」を表しています。まず自然と人間が共存する「天人合一」の立場で自然の存在に感謝し、他人の評価ではなく自分が何を表現したいのかを自問し続ける勇気と情熱が、新たな創造世界を開拓してくれることでしょう。「発想の種」にどのように光を当て、どのくらい水を与え、育成するかはあなたの「感性」にかかっています。

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